美人局(つつもたせ)について

美人局とは、狭い意味では、夫婦の共謀に基づいて、妻が男性と性的関係をもち、それを理由に、夫が男性に対して、金銭の支払いを要求する行為をいいます。

美人局は、詐欺罪(刑法246条)または恐喝罪(刑法249条)にあたる犯罪行為ですが、実際上、美人局の類型も多様化しており、美人局に該当するかどうかの判断は非常に難しい場合があります。

美人局の類型

美人局の古典的類型は、上で挙げた定義の通り、「夫婦の共謀に基づいて、妻が男性と性的関係をもち、それを理由に、夫が男性に対して、金銭の支払いを要求」するもので、行為の最中や直後に、夫がホテルなどの現場へ現れ、その場で、いわゆる「因縁」をつけることによって、金銭を支払わせるものです。男女間に婚姻関係がない場合であっても、「俺の女に手を出した。」といったような「因縁」を付けることで、金銭の支払いを要求することもあり、これも広い意味で美人局といわれます。

「行為の最中や直後」に、女性と通謀した男性が現れる場合は、美人局である疑いを非常に強くもてるのですが、ホテルなどから出てしばらくたった後や数日たった後に、証拠写真・ビデオを突き付けられ、金銭の支払いを要求される場合もあります。

出会いのきっかけも多様化していますが、いわゆる「出会い系サイト」を利用して美人局がなされるケースが非常に多くなっているようです。また、未成年者を利用するケースもあり、相手女性の年齢層も幅広くなっています。

さらに、美人局という表現に当てはまるかどうか疑わしいですが、男性が女性を誘惑して、通謀した女性によって金銭の支払いを要求されるケースもあり、女性が1人2役をこなす、自作自演型の美人局もあります。美人局の態様・手法も多様化しており、次にあげるようなものもあります。

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美人局の態様・手法

美人局の場合には、そのような請求をされるまで、美人局であることに気づかない場合や、妻がいる男性が、美人局の被害に遭ったが妻には言えず、やむを得ず慰謝料を払う場合があります。最近では、メール、出会い系サイト、MIXI・LINE等のSNSを利用して、誘ってくることもあります。

被害者となった男性からすれば、その女性の結婚生活の愚痴や、離婚したいという相談を受けると、その女性にとって特別な存在になろうとし、また相談をうける特別な存在と思うところもあり、不自然な部分を感じつつも、女性の誘いにのってしまうことがあります。特に最近は普通の主婦にみえる女性でさえ、美人局をしていることもあるので、既成概念による判断は難しい面があります。

基本的な美人局の手法

基本的な美人局の手法とは、まず、目標としたの男性と深い関係になります。その後、夫と名乗る男性から「妻と貴方とのメールのやり取りを見てしまった。慰謝料を請求する訴訟を起こすつもりだが、示談金を払えば無かった事にする」という内容のメールを送るわけです。

また、「夫にバレてしまった。とても怒っているけど、私がなんとか説得するから、示談金払える?」と女性が先に連絡をした後に、その後、関係をもった女性自身が、夫を装って関係を持った相手に自作自演の恐喝メールを送るという手法です。この手法では、夫は最初から最後の示談金を支払うまで現れることはありません。妻の不倫が発覚し、妻の不倫相手と接触もせず、示談金の要求を妻に伝言させることなど、一般的に考えて不自然です。

主婦美人局の手法

主婦美人局とは出会い系サイトで男性と知り合い、何度か体の関係を結んだ後に「妊娠してしまったので中絶する費用を出して」という手法です。もちろんその後に夫が登場する場合もあります。通常のパターンは「俺の女を傷ものにしやがって!慰謝料よこせ!」というのです。

出会い系業者美人局の手法

出会い系サイトで若い女性が「○○円でどうですか?」と話を持ちかけてくる。その話に乗ってみると、女性は番号やアドレスを簡単に教えてきます。

その後に、サイト運営者と名乗る人から電話があります。「実は先程メールをやりとりした女性は18歳未満でした。警察からIPやログの提出を要求されています。先程のあなたのメールのやり取りは青少年保護育成条例違反で逮捕の可能性があります。こちら側としても面倒な事は避けたいものですから、もしも、費用を負担して下さるのなら、IPやログを偽造して警察に提出する事もできますよ。」というのは出会い系業者美人局の手法です。

美人局被害回避方法

・未成年には絶対にメールを送らない
・怪しげな店に誘われても着いて行かない
・いざとなったら警察に相談
・積極的過ぎる程に自宅に誘われたら逃げる
・どうしても必要な身分証(免許証など)は隠しておく
・現金以外の貴重品を持参しない

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美人局の効果

美人局は犯罪行為であり、恐喝罪や詐欺罪による処罰の対象となります。

また、民事上も詐欺又は強迫に基づく金銭給付として、取消しの対象となり(民法96条)、金銭の返還請求をすることができます。

【刑法249条】
1 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
【刑法246条】
1 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
【民法96条】
1 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

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美人局と区別が難しいケース

美人局の本質は、男女間の「通謀」によって、金銭を脅し取るところにあります。しかし、「通謀」は内面の問題であるため、行為者の自白が得られるのでもなければ、状況証拠によって「通謀」の事実を証明するしかなく、それは容易なことではありません。以前は「行為の最中や直後」に、金銭の要求がなされる場合が美人局の典型的な手法でしたが、このような手法が利用された理由は、性的関係の動かぬ証拠を押さえるためであったと推測されます。撮影機材が小型化・高性能化し、性的関係の動かぬ証拠を確保することが容易になっています。それによって、性的行為が行われている現場に踏み込む必要性が減り、リスクが高い旧来の手法ではなく、数日後に証拠写真やビデオとともに、金銭の支払いを請求する手法がとられることが多くなりました。このような手法がとられた場合、「通謀」の存在を証明することは非常に難しくなるものと思われます。

実際上、「通謀」がない通常の不倫交際においても、不貞行為がなされた数日後に、不貞行為の事実が発覚しても何ら不思議はありませんし、GPSに代表される追跡機材の進化により、探偵業者ではない一般の人でも、配偶者の所在位置を特定することは可能になりましたので、不貞行為がなされた直後の現場にタイミングよく居合わせることは十分に可能なことです。このタイミングのよさゆえに、不倫交際相手は「美人局なのではないか」との疑いを持つことになります。

また、すでに婚姻関係が破綻し、離婚が決まっている夫婦間で、「通謀」まではいかないが、事実上、第三者との性的関係を容認しているようなケースにおいて妻が第三者と性的関係をもった場合に、その性的関係がもたれた当時離婚が成立していないことをいいことに、夫が第三者に対して、慰謝料請求をするケースもあります。このようなケースでは、婚姻関係が破綻しているため、第三者には慰謝料支払義務は生じませんが、婚姻関係破綻の事実を、その当時離婚が成立していなかった形式上の夫婦が黙っていれば、相手方は自らに慰謝料支払義務が存しないことを知りえず、支払いに応じなくてはならないことになります。

さらに、一度性的関係をもった直後に、不倫交際相手の離婚が成立し、慰謝料の請求をされた場合に、その離婚が、一度の性的関係と直接的な関連性を持つものなのか、それとも、その性的関係以前から婚姻関係が破綻していたのかの区別は、容易につくものではありません。

このように、「通謀」が内面の問題であり証明が難しいこと、現在では「通謀」がなくても配偶者が不貞行為の現場にタイミングよく現れることが可能なこと等から、美人局か否かの判断は非常に難しいものとなります。また、不倫の被害者は、不倫交際が発覚すると、激しい憤りを覚えるものなので、不倫交際相手に対して、かなり強い口調で責任追求をすることはよくあることです。そうした口調によって責任追及されると、自己が脅されているかのような錯覚に陥ることもあり、この点も美人局と正当な請求との区別を困難とする要因となっています。

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美人局と疑わしいケースへの対応

夫がいる女性と交際し、初めて性的関係をもった2日後に、夫と称する男性から連絡があり、不貞行為の慰謝料として、100万円の支払いを要求され、証拠として妻とホテルに出入りする証拠写真・ビデオがあることを、強い口調で伝えられたとします。

このようなケースは美人局ではない可能性も十分ありますが、美人局の疑いが生じてしまうことも無理からぬことです。一度しか不貞行為がなされていないにも拘らず、不貞行為がなされて間もないうちに、動かぬ証拠とともに、強い口調で、高額な金銭を請求されており、状況的には、美人局と類似しています。あまりにもタイミングがよく、出来過ぎていて、何か仕組まれたものを感じてしまいます。

一度だけの不貞行為であっても、慰謝料支払義務は生じますので、美人局ではないのであれば、慰謝料を支払わねばなりません。本来であれば、慰謝料額の調整をしたうえ、速やかに示談をすることが、双方にとって最も良い方法といえます。しかし、美人局であるならば、支払うべきではないうえに、慰謝料の支払いによっても問題は解決せず、さらなる恐喝的行為がなされる恐れもあります。

そこで、このように美人局の疑いが生じる場合は、相手方の氏名・住所等の身元を確認してみることです。美人局であれば、それらを教えないか、教えたとしても虚偽の住所・氏名を教えるものと思われます。この段階で、少なくとも氏名を教えられない場合は、金銭の支払いを保留した方がよいでしょう。また、住所・氏名を教えたとしても、その真偽を確かめる必要はあります。当事務所へご依頼いただければ、職権で、相手方の住民票や戸籍謄本を取得し、住所・氏名の真偽を確認いたします。同時に、相手方の家族構成を知ることができるので、妻が実在するか、実在した場合にその氏名を知ることができます。

また、金銭の支払いをする際には、必ず示談書を交わすことです。示談書への署名・捺印をもらった後に金銭の支払いをするようにすべきです。相手方からの執拗な請求から逃れるために、安易に相手方が指示した口座へ金銭の振込みをすることは慎まねばなりません。身元を明らかにすることなく執拗な請求をするのであれば、美人局である可能性が高くなるので、警察へ相談した方がよいです。その際には、証拠が必要となるので、相手方からの請求があった際の通話内容を録音する等して、残しておいた方がよいです。

もっとも、交渉過程において相手方に住所・氏名等の身元を明らかにすることを要求すると、自身の住所を示す必要に迫られることもあります。自身の住所を示すことに危険を感じる場合は、それもできず。結局相手方の身元を明らかにすることができなくなります。そのような場合には、示談書を交わす際の捺印を実印でなすこと、及び印鑑証明書の提示・提出を要求する必要があります。また、相手方が当該不貞行為により離婚に至ったと主張し、その前提で慰謝料額が定められているのであれば、戸籍謄本の提出を要求するべきです。

いずれにしても、当該事案が美人局であった場合、後々支払った金銭を取り戻すことには、非常に困難が伴いますので、金銭の支払いをする際には、相手の身元及び金銭支払いの事実に関する書類上の裏付けをもちながら、行うべきといえます。

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美人局と淫行条例

美人局が18歳未満の未成年者を利用して行われるケースがあります。

18歳未満の未成年者と「淫行」がなされると、その行為そのものが、青少年保護育成条例中の淫行処罰規定(いわゆる「淫行条例」)、児童福祉法、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律に該当します。ちなみに、ここにいう「淫行」とは「広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為」とされています。

「淫行条例」に該当すると、愛知県の場合、「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」というかなり重たい罪が課されます。18歳未満の未成年者と「淫行」を行うと、美人局であることを分かりつつ、金銭支払いの要求に応じてしまうことになりやすいです。

しかし、金銭の支払いに応じたからといって、根本的に問題が解決されるとは限りません。また、示談に至らなくても、事案によっては不起訴処分となることもあります。非常に厳しい選択なのですが、このような事態に陥った場合、一度、「淫行条例」に詳しい弁護士に相談し、自身のケースがどのような扱いをされるかについて知ったうえで、行動の選択をすべきといえます。

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