公正証書と強制執行

不貞行為の慰謝料の支払方法で、一括払いではなく、分割払いをするケースがあります。そのような場合ですと、支払期間の途中で、支払いが滞るという心配があるので、示談書を強制執行認諾約款付き公正証書にすることが多いです。

強制執行とは、強制執行認諾約款付き公正証書などで決められた事が守られなかった場合に、裁判所に申し立てることにより、国にその手続を実行してもらい、相手に履行してもらう手段のことです。簡単に申しますと、強制執行とは、支払いが決まったお金を国(裁判所)に差押えしてもらい取り立てることとなります。

強制執行の仕方は、公正証書の債務名義に執行文を付与してもらい送達証明書を作成してもらいます。

執行文の付与とは、「強制執行できる」と記載された紙を債務名義に付けてくれることで、作成した公証役場で執行文の付与と送達証明書を発行してもらいます。

送達証明書とは、相手の手元に債務名義の謄本が送達されたことを証明する書類です。公正証書を作成した時に、公証人に依頼すると同時に送達証明書を発行してくれます。この送達証明書を発行する手続きをとると、相手に債務名義の謄本が特別送達で郵送されますので、これだけでも相手に心理的圧迫を与えることができ、支払いを再開するケースもあります。

この送達証明ですが、相手方が今はどこに住んでいるか分からない場合は厄介です。こういう場合は、相手の本籍地の市区町村役場で相手の戸籍の附票を取れば住民票の所在地は判明しますが、相手の住所が分からない場合は、専門家に相談する方がいいでしょう。

次に、強制執行手続きをする際の注意点を申し上げます。強制執行では、相手の財産を差し押さえることができますが、その際、差し押さえるものとして最も有効なものは給料になります。慰謝料の債権は、給料から税金と社会保険料を差し引いた金額の4分の1までしか差押えできません。また、この給料天引きの強制執行をすることによって、支払う側の人の会社での立場が危うくなる可能性があります。リストラ候補に挙がったり、出世レースのライバルに蹴落とされたり、場合によっては会社に居づらくなって辞めざるを得なくなる可能性も大きいということを踏まえて、給料天引きの強制執行をするかどうか考慮する必要があるでしょう。

会社を辞めて給料をもらえなくなったら、もちろん給料からの差押えはできません。相手に対し、強制執行をして、給料を差押えするといきなり伝えるのでなく、内容証明などで請求する方法が賢明かもしれません。また、支払期間中に会社を変わった場合は、会社がわからなくなり、給料天引きでの強制執行ができなくなりますので、公正証書を作成する際には、住所や連絡先・勤務先を通知するような通知義務の条項を入れておいたほうがいいでしょう。

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